毎年多くの方が受験する人気の宅建士。ここまで人気になるのはなぜなのか?具体的にどんな職業の人が狙ってるのか?などなど、過去の試験実施結果を元に分析してまとめてみました。
そこから支持される4つの理由と合格率・合格点のボーダーを割り出しました。これから宅建士を受験しようと思われてる方も、少し興味がある方も、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
20万人前後を引き付ける宅建士資格!合格者からみるその魅力とは
既にご存知の方は多いと思いますが、宅建士は国家試験の中でもトップクラスの受験者数を誇る人気資格です。資格が直接仕事に関係する不動産や住宅関係の人だけでなく、他業種の人や学生や主婦など、様々な人が毎年チャレンジしています。
宅建士の他に受験者数が多い国家資格では、「ファイナンシャル・プランニング技能士」「危険物取扱者」があります。いずれも宅建士試験よりも受験者数が多い国家資格ですが、受験する等級や種類によって受験資格を満たさなくてはいけません。
その点、宅建士試験に受験資格はありません。性別・年齢、職業も問われないので、小学生からお年寄りまで、自由に受験できます。土地や建物の売買は宅建士の独占業務なのに、受験はこんなに自由。これも宅建士の魅力の一つと言えるでしょう。
では、その魅力を平成29年度の試験合格者像から具体的に見て行きましょう。
参照:平成29年度宅地建物取引士資格試験実施結果の概要一般財団法人(不動産適正取引推進機構)
【平成29年 受験者数】男 143,971人、女 65,383人|合計:209,354人
【平成29年 合格者数】男 21,677人、女 10,967人
受験者のほぼ3割が女性となっています。住宅・不動産業界は男社会と思われがちなので、女性受験者が多いのにびっくりされる人も多いのではないでしょうか。実際に業界で仕事をしたこともある管理人も女性の宅建士と名刺交換したことはほとんどありません。これは仕事に直接的に関係ない人も受験していると考えてよいでしょう。
受験者数に対して、合格率は女性が少し高くなっています。きっと女性の方がまじめに試験勉強に取り組んでいるからだと思います。
【平成29年合格者 平均年齢】は以下の内容となっています。
男 35.8歳 | 女 34.2歳
※最年少合格者 13歳(男) | ※最高齢合格者 89歳(男)
すごいですね!
宅建士の勉強は私たちの生活に関わることが多いとは言え、法律系の資格なので聞き慣れない言葉を理解する必要があります。そう考えると知識の下地がある程度身に付く年齢に達した方が有利ということもあると思います。実際に平成29年度の合格者をみても、平均年齢は男女とも30半ばとなっています。社会人として経験を積んで油が乗った頃ですね。ちなみに、管理人が宅建士試験に合格したのは23歳の時でした。それを思うと、この少年とおじいさんの頑張りにはただただ頭が下がります。見方を変えれば、宅建士という資格が今すぐ仕事に直結しなくとも、将来のため、また自分のために取得したいと考える人が多いと言えます。
幅広く人気を集める宅建士!その支持される4つの理由
【平成29年合格者 職業別構成比】不動産業 34.3%|金融関係 10%|建設関係 9.6%
|他業種 23.1%|学生 11.5%|主婦 3.9%|その他 7.5%
宅建士と直結する業種である不動産と建設関係以外の職業の人が半分以上を占めています。いかに宅建士資格が職業に関わらず幅広く支持されていることがわかります。
では合格者の職業構成比から、その支持理由を紹介します。
支持理由その1|不動産・建築とは切っても切れない関係
契約前に「重要事項説明書への記名・押印や実際の説明、契約成立後に交付する書面への記名・押印」などが必要となりますが、これらは宅建士の資格を持つ人だけしか出来ません。また、土地や建物を販売する不動産業者は、事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で宅建士を置くことが法律によって決められているので、不動産業を営む会社では、規模を拡大したり事業を継続していくうえで、常に宅建士が必要とされるわけです。
それだけでなく、住宅・不動産販売会社にはスキルアップを目的に、社員に宅建士資格の取得を奨励するところが多くあり、取得者には月に数千円から数万円の手当てが支給されています。
支持理由その2|資格が転職やキャリアアップに役立つ
不動産と建設、銀行以外の業種の人が2割強もいます。どのような職業か推察するとすれば、資格や知識が自分の仕事の幅を拡げるコンサルティング業の人や司法書士・税理士や、マンション管理会社・投資会社の社員。また、個人経営も含めて、不動産資産を多く所有する会社の社員や役員などが考えられますが、宅建士の資格を取って転職を考えている人が多いのではないかと管理人は考えます。宅建士がそれだけ社会にニーズがある資格であることは、管理人も体験上知っています。
支持理由その3|就職を有利に進めたい学生にも人気
なんと学生さんの合格者数が金融関係を上回っています。銀行や保険会社では不動産が絡む事案が多いため宅建士の資格や知識が大変意味があることは説明するまでもありませんが、これほど学生さんの合格者が多いとは驚きです。少しでも就活を優位に進めたいと考える学生さんの心情が表れていると思います。宅建士は企業や社会でニーズが多く、あらゆる資格の登竜門と言われる資格なので、社会に出る前に取得しておきたいと考える学生さんが多くいても全く不思議ではありません。
支持理由その4|宅建士は主婦にとっても魅力ある資格
主婦の人が3.9%ということは、およそ8,000人の主婦が合格していることになります。さらに、主婦でも学生でもなく、会社員でもない人は15,700人もいます!主婦やその他業種の人が宅建士資格を取る理由を、管理人が勝手に想像してみましたので参考にしてください。
★以前、住宅・不動産会社でOLをしていたので、資格を取って復帰したい。
★町の不動産屋さんなど、資格を取ったらパートの幅が広がるかも。
★今はフリーターだけど、資格を取って就職活動をしたい。
★自分で不動産会社を起こしたいので脱サラして受験した。
★マイホーム購入に失敗しないための知識を身につけたい。
★勉強範囲が生活に関わることが多いので楽しい。
★宅建士試験に挑戦するのはライフワーク。合格は人生の目標。
過去10年間の試験結果か導く!宅建士試験の偏差値とは?
さてここまでは、宅建士が20万人もの人が受験する国家資格であり、年齢や職業に関係なく幅広い層から人気を集める理由について見てきました。
次は、過去10年間の受験概要から宅建士試験の偏差値を探ってみたいと思います。
【過去10年の宅建士資格試験結果】
試験年度 | 合格者数/受験者数 | 合格率(合格点) |
---|---|---|
平成29年(2017年) | 32,644/209,354人 | 15.6% (35点) |
平成28年(2016年) | 30,589/198,463人 | 15.4% (35点) |
平成27年(2015年) | 30,028/194,926人 | 15.4% (31点) |
平成26年(2014年) | 33,670/192,029人 | 17.5% (32点) |
平成25年(2013年) | 28,470/186,304人 | 15.3% (33点) |
平成24年(2012年) | 32,000/191,169人 | 16.7% (33点) |
平成23年(2011年) | 30,391/188,572人 | 16.1% (36点) |
平成22年(2010年) | 28,311/186,542人 | 15.2% (36点) |
平成21年(2009年) | 34,918/195,515人 | 17.9% (33点) |
平成20年(2008年) | 33,946/209,415人 | 16.2% (33点) |
過去10年の合格点は32~35点で推移しています。宅建試験は決まった合格点というものがなく、大体合格率が15%~16%になるよう調整されていると思われます。つまり問題が難しい年の合格点は下がり、逆に問題が簡単な年は上がるというわけです。とはいえ、50点満点のうち35点、7割以上を正解できれば、ほぼ合格できるとみていいでしょう。
宅建士は士業の中ではチャレンジしやすい資格です
平成26年に「宅地建物取引士」と名前を変えて“士業”の仲間入りをした宅建士。士業といえば、まず弁護士や司法書士、社会保険労務士などが思い浮かびますが、いずれも試験は専門性が高く学習範囲も広いうえに合格率が低いという、難関ぞろいの資格なのです。
参考までに紹介すると、社会保険労務士(社労士)の平成29年度の合格率は6.8%です。しかも社労士試験の合格に必要な学習時間は800時間〜(司法書士は1,000時間〜)と言われています。社労士も人気のある資格ですが、労務関係の仕事をしている人や法学部出身の人以外では聞きたことのないような法律用語から理解しなければならないので、チャレンジするには相当の覚悟が必要です。
一方、宅建士試験合格に必要な学習時間は300時間〜。毎年3万人もの合格者が出るわけですから、比較的ハードルが低いと言えるのではないでしょうか。
学習の楽しさやシンプルな試験も人気の理由
宅建士の学習内容は法律系が中心とはいえ、土地や不動産にまつわるものなので、不動産業でない人でもすんなり入っていけると思います。また、宅建士試験に合格して資格を活かす・活かさないかはさておき、宅建士の学習を進めていると色々なことが分かって、学習自体が楽しくなってくる人も珍しくありません。しかも、身に付いた知識は私たちの生活に多いに役立つのです。
例えば、マイホーム用に土地を買ったり、所有する不動産を売ったりするケース。残念なことですが、不動産業者のなかには、不良物件を売りつけようとする悪質なものが稀にいます。もし宅建業法の知識があれば、悪質な不良物件を買わされるようなことありません。また、新聞に折り込まれる不動産広告の内容を見るだけで業法違反かどうかを見抜けるようになります。
あと、試験はシンプルな四肢択一のマークシート形式です。難しい記述問題がないのも受験数を押し上げている事実はあると思います。「なんとなく受かりそう」「会社が取得を奨励しているのでしかたなく」など真剣味のない受験者も多いでしょうね。その点を考慮すると、まじめに勉強している人の合格率はもっと高くなると思われます。